アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

カブちゃん降臨





僕が入境してから約1か月後、カブちゃんが台北に降臨した

その日の前日、滞在先のアパートの契約が1か月で切れるにあたり同じアパート内で別の部屋へちょうど移動したばかりだった。この部屋は10階にあって、窓の外、すなわち北の方に山並みが見えている。もしかしたらカブちゃんを乗せたJAL便が飛んでくるのが肉眼で見えるんじゃないかと思っていたらやっぱり見えた


梅雨が明けた青空の遠く、白い機体の姿が見えた時には感動すら覚えた。あれにカブちゃんが乗っている。あんな空の高いところを、窓際のシートに座ったままのカブちゃんが飛んでこちらに向かってきている。その様子を想像するとなんだか可笑しい気もしてくるが、いま自分が目にしている特定の飛行機に自分の知っている人が乗っているのを目撃するのは人生で初めてだったし、何だかとても不思議な気持ちだった

「降臨」などという大仰な言葉を使ってしまったが、空の上から降りてくる様子を見ればそんな言い方もしたくなってしまうのである


飛行機は真っすぐこちらに向かってくると思っていたらそのまま通り過ぎていってしまった。あれれ、違う飛行機だったかなと思ってスマホで航路を見たら右に旋回して空港に入ってくることが分かった。なるほど。飛行機の音は自分の耳にも聞こえてくるが機体の姿が見えない。すると左斜め前方の低い位置に突如として飛行機が現れた。慌ててシャッターを押した(スマホだけど)


予定よりも30分早く松山空港に到着した。無事に煩雑な入国手続きも終わったようで、カブちゃんから連絡が入ったのは防疫タクシーの中からだった

 「タクシーのレシートもらう?」

これが台北での最初のLINEメッセージだ。カブちゃんはいつだって現実的だ。少なくとも僕よりは。風情も何もあったもんじゃないが、、とにかく無事について何よりだ


カブちゃんが防疫ホテルに着いたら後で会いに行ってみようと思った。もちろんカブちゃんはホテルの部屋の中、そして僕は梅雨明けでとても暑い台北アスファルトの上、というシチュエーションではあるのだが