10月15日、サントリーさんにご招待いただき秋の登美の丘ワイナリーを訪問してきました
今回もワインブロガーのみなさんとご一緒です
今年は台風の影響もあり、登美の丘ワイナリーではブドウの収穫は例年よりも早い8/22から開始したそうです
芽吹き(デブルマン)は4月初旬と平年並みも、花が咲く(フロレゾン)のは通常より1週間程度早い5月末あたり
そして6月から7月は雨が平年の約6割くらいで、色づき(ヴェレゾン)は1週間から10日ほど早い7月末から8月初旬
8月中旬から台風もあってコンディションが悪くなり、8/22と早めに収穫を開始したそうです
そんなわけで、通常だと僕たちが訪問した頃は例年だと収穫の時期にも重なるようですが、僕たちが訪問させていただいた時はほぼ収穫を終えたあと
もともとは収穫させていただくイベントだっただけに若干残念ではありました
しかし、収穫をさせて頂く代わりに登美の丘ワイナリーの渡辺所長みずからのご案内により畑を見学したり、2016年の新酒をテイスティングさせて頂いたりと、今回も特別な体験をさせて頂くことになりました
だいぶ長くなりますが、一気にいきたいと思います
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カブちゃんと山梨へワイナリー見学に行くときは経費節約でだいたい鈍行を乗り継いでいくのですが、新宿からサントリーさんの手配による特急に乗り、約1時間半で甲府市に到着
駅でピックアップしていただき、チャーターしたバスに乗り、あっという間に登美の丘ワイナリーに到着(早い!)
◆ヴィンヤード
登美の丘ワイナリーは数年前に一度プライベートで訪れたことがあります
だいたいこの辺りで標高500メートル、富士山が望める眺望の素晴らしいロケーション
荷物を置き、ブロガーさん達と2台の車に分乗してさっそくワイナリーの見学に出かけました
僕が乗った車は恐れ多くも登美の丘ワイナリーの渡辺所長自らによる運転、なおかつ助手席・・
見晴らし台があるこの場所はワイナリーでももっとも高い位置にあるようで、標高は約600メートル
この辺りは11月中旬くらいに紅葉になり、観光のトップシーズンを迎えるそうです
この見晴らし台で、ワイナリーが位置するテロワールの特徴についてを渡辺所長からしっかり時間をとって丁寧な説明をして頂きました
<土壌>
土壌としては黒富士の火砕流でできた土地
今年のように台風が多くても、台風は南アルプスにあたって雨を落としていくため影響は受けにくいのだそうです
<日照>
日本でも恵まれている方とはいえ、6月から9月にかけての日照はボルドーよりも短いのだそう
2009年にカブちゃんと一緒にボルドーに出かけたのは年末の真冬の時期だったせいか雨が多い印象でしたが、ワインのテキストを見てもボルドーは海洋性気候でガルフ湾流の影響を受けるのでブドウの育成期は晴天が続くようです
<温度>
熟成時の夜の温度が9月から10月にかけて下がるのがよいそうで、だいたい10°C~15°Cくらいが目安になるようです
<雨>
あまり水が多くても木が伸びてしまってよくないそうで、6月から9月に雨が多いのはワインメーカーとしては技術的に困難になるとのこと
<品種>
登美の丘ワイナリーでは赤白がだいたい6:4の比率で植えられていて、赤はメルローが多く、他にカベルネ・ソービニヨン、カベルネ・フラン、プティベルド、ベリーA、ブラック・クイーンなど
白は、シャルドネ、甲州、リースリング・フォルテなど
<収穫>
今年の収穫はリースリング・フォルテとシャルドネでスタート、メルローを9月初旬に、そして9月終わりから10月初旬でプティベルド
ベリーAは10月中旬に収穫
9月中旬から10月上旬で日照が短く台風が厳しくなり、赤系ブドウは10月中旬にかけて収穫
甲州も僕たちがワイナリー訪問する10/15の直前の10/11~10/12で収穫してしまったそうです
計画した収量は確保できたものの、灰色カビ(プリチュール・グリーズ)が出たため選果で対処、例年より手間をかけた年になりました
なので、なんとワイナリーのPR担当や警備の方、さらには東京のブランドチームも参加した収穫になったそうです
それはそれで楽しそうですよね
<畑>
こちらはカベルネ・ソービニヨンの畑
写真では雨よけが木の上についていますが、畑によって雨よけを取り付ける位置が異なっていました
土地の特徴による風向きの違いなどを考慮して雨よけの位置を変えているそうで、こうしたきめ細かい対応にかける手間暇に対して頭が下がります
同じ木についたブドウでも、今年伸びた枝から分かれて育った枝についたブドウは花付きが遅れるため熟さないのだそうです
そういう細かいこともあらためて認識しました
こちらはブラック・クイーン
名前がかっこいいですよね・・
”ブラック・クイーン”と聞くと僕はいつもイギリスのロックバンド、QUEENのセカンドアルバム「QUEENⅡ」に収められている「The march of the black queen」を思い出します(ほとんどワインと関係ないけど)
こちらは甲州の畑
前述のとおり甲州の収穫はすでに終わってしまったけれど、僕たちブロガー達の訪問のために収穫せずに木にブドウをつけて残しておいてくれたそうです
そういう細かい配慮がありがたい・・
甲州は皮が厚く、ポリフェノールの含有量が多いそうです
ヴェレゾンの前はべト病に気を付ける必要があるけれど、甲州は病気にも強い
ワイナリーは1984年に冷害に襲われ植え替えを余儀なくされたけれど、甲州はそんな冷害を生き残った
そういうこともあってか、あらためて土地にあった品種だと見直しているのだそうです
海外で日本ワインを広める時にオリジナリティとしての強みを生かしていくにも甲州はよい品種で、繊細な和食の広がりと連動して世界にアピールする可能性をもった品種といえるようです
確かに、オーストリアならグリューナー・フェルトリーナー、ハンガリーならフルミント、南アならシュナンブラン、というように国を代表する品種というのは必ずありますよね
日本なら甲州、という売り込みにはあまり違和感がありません
この淡くて可憐なパープルもかわいい
ヨーロッパのワイナリーで雨よけをつけた栽培は、実際に自分がフランスやスペインで見てきた経験と照らし合わせても確かにあまり見たことがありません
その点、土地にあった甲州もあまり雨よけは要らないみたいで、雨よけが要らなくなると手間がかからなくなるため生産が効率的になります
さらに高品質が向上していけば、ヨーロッパのような生産に近づけていくことができる
手間暇かけずに高品質のワインを作る
土地にあった甲州という品種に対してはそういう期待もあるのだそうです
甲州の畑を見学した後、再び車に乗って醸造エリアの見学に移行します
◆醸造・貯蔵エリア
土地の模型があり、僕たちが案内していただいた場所や土地の特徴(水はけの違いなど)などを大まかに説明頂きました
※渡辺所長自らジオラマを使って解説
途中、除梗機や圧搾機、あるいは仕込中のタンクなども見学させて頂きましたが、カメラ撮影は禁止
タンクは複数並んでいましたが、ブドウの区画ごとに醸造するそうです
このタンクにブドウジュースを入れる訳ですが、ブドウ自体はこのタンクがある場所よりも高いところで絞り、そこから重力を利用してタンクに流し込んでいく
下からポンプの力で持ち上げるのではなく、この方がブドウに負担をかけないそうです
<白ワイン>
白ワインは絞ってからしばらく置いてそのあと16~22°Cで約3週間発酵
レモンやグレープフルーツの香りはブドウジュースの段階では感じられないけれど、酵母の作用で分子の結合が切れて香りが出てくるというような説明でした
13~15°Cでは酵母による甘いバナナのような吟醸香が出てしまい、22°C以上だと今度はワインが重くなり過ぎる
16~21°Cくらいが白ワインの発酵にちょうど良い温度なんだそうです
<赤ワイン>
赤ワインは白よりも高い25~27°Cで発酵させて色や香りの成分を引き出す、ブドウから丸ごと抽出していく
反面、白ワインは酵母でそれらを引き出すという違いがあるそうです
毎朝タンクの様子を見、果汁を混ぜながら発酵させ、混ぜて空気を入れることで酵母は長生きするらしく、そうして香りや味のバランスを調整しながら発酵を進めるそうです
そういう点で赤ワインはずっとタンクに張り付いておく必要があるので手間がかかるのに対し、白ワインは絞ってから後は放っておけばいいそうです
赤白でそういう違いがあるということは全く知りませんでした
2016年ビンテージを詰めるための空のボトルが山と積まれていました
僕たちが見学したその翌週に瓶詰を開始するのだそうです
貯蔵庫は世界のどこのワイナリーに行ってもだいたい同じような感じ
僕が好きなのは何と言っても庫内に充満するワインや木樽の香り、それにひんやりとしていてなおかつしっとり湿度を保った空気
ワイナリーに来た!という実感が持てる場所の一つです
白ワインは樽で発酵させ半年間樽熟成をさせる
2015年の白ワインはほぼ熟成が終わり、赤ワインは来年の春先まで熟成させるとのこと
2003年からは日本のミズナラの樽も使用しているのだそうです
瓶詰したワインもずらり
瓶熟する目的は、瓶に詰めたばかりはちょっとバランスの悪い状態なのでこれを本来の姿に戻すためなんだそうです
15~18°Cで温度をキープ
古いビンテージももちろん大事に保存中
登美の丘ワイナリーでも貴腐ワインは造っていますが、うまくカビ(ボトリティスシネレア)が付かないとできません
5年に一度くらいのペースでできるそうで、2016年は貴腐ワインはできなかったそうです
貯蔵庫の見学を終え、いよいよテイスティングに移ります
◆テイスティング
テイスティングルームに移動する際に渡辺所長が車中で解説してくれたのは、この辺りの山の保全にも気を配った取組みもなされているということ
下草に陽が当たるように適度に木を間引くため伐採したり、竹林が増えると土壌が流れやすくなるので竹を切ったりされているそう
細かいことだけど、ワイナリーを含むこの界隈全体のテロワールの維持に目配りしているのですね・・
もう一つ面白かったのは、サントリーの事業所ではこの登美の丘ワイナリーも含めて小さいながら必ず神社が祀ってあるという話
創業者が信心深い方だったそうで、どこに行っても必ずあるのだそうです
そうこうするうちに本日のワイナリー見学の出発地点、眺富荘に到着
上の写真とは並びの順番が異なるのですが、テイスティングの順番は以下の通り
1.ジャパンプレミアム 甲州 2015
2.ジャパンプレミアム 甲州 2016(新ヴィンテージ)
3.ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA 2014
4.ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA 2016(新ヴィンテージ)
5.ジャパンプレミアム 津軽ソービニヨン・ブラン 2015
6.登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤 2013
7.登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤 2014
1.ジャパンプレミアム 甲州 2015
色合いは透明に近い淡いイエロー
渡辺所長が表現された”むきたての青みかんのような印象”というは言い得て妙
キュッと引き締まる酸があり、フレッシュでキリッとしたおいしさを感じてほしいワインとのことでした
黒富士の火砕流の影響を受けた傾斜地の穂坂地区(韮崎の近く)のブドウを使用しているようです
土地の特徴としてはワインにはボリューム感をもたらすということ
甲州ではあまり産地の特徴ということが言われないけれど、あきらかな土地の個性があるそうです
2.ジャパンプレミアム 甲州 2016(新ヴィンテージ)
こちらはまだ新酒ということもあってか濁りが残っています
香りにまず感じたのはセメダインのような香りで、これはいわゆるエステル香というものだと思われます
爽やかなパイナップルのニュアンス、フレッシュながらボリューム感は2015年よりもある
全体的には2016年の方ができが良いそうです
渡辺所長は、ニコライホーフのグリューナー・フェルトリーナーやロワールのミュスカデによいイメージを持っているそうでした
そういうイメージはサントリーによる甲州ワインの造りにも影響を与えそうです
次はベリーAに移ります
3.ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA 2014
山梨県と長野県のブドウを使用、明るく透明感のある色合い
砂糖菓子、スパイス、イチゴのニュアンス
タンニンは少なめ、フレッシュで柔らかい
少し冷やして飲むのが推奨されるそうです
4.ジャパンプレミアム マスカット・ベーリーA 2016(新ヴィンテージ)
新酒ということもあってやや濁りがあります
赤いイチゴの香りだが、黒系果実の印象もある甘い香り
新酒なのでリンゴ酸が残っており、フレッシュな酸が感じられ少し閉じた感じ
14年の方がより柔らかく、16年はよりフレッシュな印象
白に戻り、ソービニヨン・ブランです
5.ジャパンプレミアム 津軽ソービニヨン・ブラン 2015
津軽のソービニヨン・ブランから造られるワイン
色合いはグリーンがかったレモンイエロー
カシスの芽、グラスを回すとリンゴのような香りも
産地は津軽だけあってリンゴ畑が広がる中にポツポツとブドウ畑が点在するそうです
10月はすでに寒く、9月でも気温が低いいわゆるクール・クライメットで、アロマを十分に蓄えられる環境にある土地
5月に芽吹きが始まるため、北の産地といえども収穫までに育成期間が短くもないそう
この点が北海道との違いなんだそうです
よって津軽は国際品種が熟成できる土地であり、なおかつソービニヨン・ブランは津軽の気候にマッチしているとのコメントでした
土は火山灰が積もった黒い土でミネラル感があり、収量制限をしている
ステンレスタンクでは白ワインの標準的な11°C~22°Cではなくもっと低い温度で発酵をスタート、ソービニヨン・ブランの香りを引き出す工夫をしているそうです
特に14年と15年はよい年で、熟成期間が長くとれる時は醸造における選択肢が増えるのだと仰っていました
他のブロガーさんの感想を聞いても、このソービニヨン・ブランは高評価だったようです
最後に赤にいきます
6.登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤 2013
しっかり濃いめ色合い
プルーンなど黒系果実や茎っぽいニュアンスも、タンニンがシルキーで柔らかい印象
13年は乾燥してよく熟した年だそうで、早くから糖度が上がり、そののちゆっくりと熟していったそうです
前半で糖度が上がり、後半でゆっくり熟した
渡辺所長も「いま飲むなら次の14年よりも13年」とおっしゃる通り、他のブロガーさんも13年のほうが好評価といった感じでした
樽熟1年、新樽比率は30%
アルコールは12度
なお、ヴィンテージ+5年で飲み頃がやってくるのがサントリーのワインとのことでした
栓を開ける目安として活用できる情報だと思います
7.登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤 2014
ブラックチェリー、カシスなど
アタックは柔らかいが中盤から強めの印象、酸の香りも13年に比べると高めに感じられてよりシャープ
13年に比べるとやや固い印象ですが、温度が低く香り高い年だったため前半に香りを作り、最後に糖度が上がった年だそうです
13年とは反対に、前半では香りを作り、後半で糖が上がった
樽熟1年、新樽比率は30%
アルコールは13度と13年より高め
渡辺所長によれば14年はトップヴィンテージなのでしばらく寝かせてもらった方がよい、とのことでした
ブランドサイトを見ると発売が2016年11月1日となっています
早めに手配した方が良いかも知れませんね
朝から出発したワイナリーツアーも、すでに日暮れ時を迎えつつあります
他のブロガーさん達は試飲コーナーで熱心に味わいを試していました
ワイナリーから再びバスで市内に移動、連れてきて頂いたのはこちらのレストラン
店選びだけでも難儀しそうなのに、サントリーさんの努力は大変なものです
てっぱん 秀
山梨県甲府市中央1-1-14
055-227-9030
広島の書家の方にわざわざオーダーして作成してくれたという、お手製のネームプレート兼コースターが用意されていました
もったいなくて濡れたビールグラスとか置けないけど・・
水菜のサラダ
ドレッシングもとてもおいしい
「最初はビールにしますか?」というサントリーさんの問いに対し、他のブロガーさん含め誰も賛同できず・・
僕も限られた酒量をわざわざここでビールに割り当てるのはもったいないと思い、最初からワインを頂くことにしました
登美の丘 シャルドネ 2014
バーニャカウダ
この辺りから宴会の方に集中し始めてしまいメモがこれ以上残っていませんでしたので、、思い出しながら書いておきます
登美の丘 赤 2013
ここで遠く離れた席の方からフラッグシップワインが回ってきました
登美 2012
※説明があったかもしれませんがほとんど聞いてない。。
タイトなテクスチャーでエレガント
「登美の丘 赤」と比べても確かにレベルがグッと数段上がった感じがします
厨房で”ペタペタ”と生地をこねている音が聞こえてきてからしばらくして後、目の前に運ばれてきたハンバーグ
このハンバーグは今まで食べた中でもかなりおいしかった・・
細かなミンチにしすぎていないため、肉の食感を残した歯ごたえのあるハンバーグです
ニンニクを使ったソースとの相性もばっちり
サイコロステーキが食パンに乗って出てきました
この食パンは後で回収され、チーズなんかと一緒に焼いたものをお土産として頂きました
だいぶ長くなりましたが、これですべて日程終了です
電車の時間も近づいてきて、慌ててお店からバスに乗り、甲府駅に到着
ほろ酔いの状態で東京までの帰路を過ごしました
週末にもかかわらず機会をご提供頂いたサントリーの方々、そしてツアーに参加し一緒に盛り上げてくれたブロガーの方々にあらためて感謝したいと思います
いやー、それにしてもいろいろと勉強になりました・・
<完>
今回ご紹介したワインはこちらから購入できるようです
▼ Amazon https://goo.gl/QPciu5
また、今回ご一緒したブロガーさん達のワイナリー訪問の記事などは、後日こちらのサントリーHPで掲載頂けるようです
もしよろしかったらチェックしてみて下さい
▼ サントリー日本ワイン HP http://www.suntory.co.jp/wine/nihon/matome/
さらに・・今年は11/17に2016年のボジョレー解禁
ヌーボーでありながら”熟成感”が感じられる【シャトー ド ネルヴェール ボジョレー・ヴィラージュ ヌーヴォー 2016 】をAmazon限定で予約受付中という情報もサントリーさんから頂きましたので合わせて掲載しておきます
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