アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

レゼールデカー @茗荷谷


3月に引き続き「レゼールデカー」をランチで再訪した。とてもよい印象しか残っていなかったのだが今回もまたそのイメージが崩れることはなく、むしろより確固としたものになった

はっきり言ってこのレストランはお値打ちだと思う。まだ若い渋谷シェフが手がける料理はどれをとっても均質なレベルが保たれていて期待を裏切られることはなく、しかもその水準が高い。いや、けして僕たちは美食家と呼べるようなものではないということは断っておきたい。批評しているつもりはないのだ。しかし素人が食べてとてもおいしいと感じるのだから文句はないだろう。もし文教地区の茗荷谷という場所ではなく港区などに立地しているならばもっと繁盛していてもおかしくないと思うのだが、できることならこのままこの地に留まって欲しいと思う




まず最初に頂いたワインは”Louis Max Beaucharme Blanc 2016(ルイ・マックス ボーシャルム ブラン)”。確か渋谷シェフが「エルメスのデザイナーが手掛けている」と言っていたラベルのデザインも美しい



カブちゃんは僕が前回訪問時に頂いたVindal(ヴァンダル)のソービニヨンブラン。いわゆるソービニヨンらしい青い香りがあまりしてこないのだが、それがこのワインの特徴でもあり良さでもあると思う



さてここからが料理だが、まず最初がこちらの前菜。新鮮な野菜をふんだんに使用しているため季節感があって見た目もきれいだ。細長いグラスに入れられたスープ(写真左上)と合わせて頂く




芽室産の”ケント”と呼ばれるかぼちゃを使用したスープは甘みが上品な一品だった。そこにスパイスが振られているのだが、このようなスープは前回訪問時も出てきた。レゼールデカーの特徴の一つかも知れない



パイ包み。ポーションがあまり大きくないのもいい。レゼールデカーがいいと思う理由の一つはこのバランス感だ。食べ終わった後に満腹であるのはあまり好みではない。腹八分目くらいがちょうどいいと感じるお年頃(!)になってきたということかも知れないが、ここで少し量を抑えることで後半の食事もよりおいしく頂くことができるわけだ



続けてボルドーを。”L'expressions de Pauillac 2013(レクスプレッション・ド・ポイヤック)”というワインだが、ネーミングが不思議だと思い調べてみたところポイヤックのワインを詰めたものだということらしい。そのシャトーが有名な格付けシャトー(例えばシャトー・ラトゥールのような)らしいのだが詳しいことはよく判らなかった。輸入はアストルというところが手掛けているようだ



この料理は鳥肉を使用したものだったが、スペイン産の鳥を一匹丸ごと開いて作ったものだったと思う。前回訪問時にシェフが「来週のランチに出そうと思っ」て仕込みをしていた、まさにその料理がこれだったのではないかと思う。それも食べてみたいと思っていたので今回食べられたことはラッキーだった。それと印象深かったのがソースだ。オレンジの酸味が活かされていて、チョコレートでコクを足しながら軽さも感じさせるソースは絶品だった



アスパラガスは北海道産で今年の初物だそうだ。確かに瑞々しさを感じるおいしいアスパラだった。そういえば北海道の野菜で思い出すエピソードがある。学生時代に就職活動で訪れた東京の政府系金融機関が連れて行ってくれた都内の居酒屋(?)で食べたフライドポテトが驚くほどおいしくなかったのだ。あれにはビックリした。普段食べていた北海道のジャガイモがいかに旨いものだったのかを思い知らされたような気がしたものだ

レゼールデカーはデザートも絶品。柑橘系果実の酸味を活かしたサッパリとした味わいが口の中をリセットしてくれる。ここでもし重たいケーキが出て来たら少ししんどいかも知れない。最後までスッと胃の奥におさまっていく。コースの終盤でほっと一息できる瞬間だ





前回以上に渋谷シェフと会話ができたのだが、様々なことに興味と関心を持つことのできるシェフなんだということが分かった。フランス料理以外にも広がるそうした知識や経験がまた料理にポジティブフィードバックしてくるということはきっとあるのだろうと思うし、それがゆえに料理が古くならず常に更新されていくということもあるかも知れない。なんでもそうだが、専門領域以外のことも興味がある、知っている、というのは大事なことだろうと思う



そんなシェフとの雑談の合間にいつの間にか酒の話題になったのだろう。おもむろに奥の方からジンのボトルを持ってきてテイスティングに一杯注いでくれたのが上の写真。サン・ローランという、シーウィード(昆布)を使用したカナダ産のジンだ。ほのかにヨードのニュアンスが感じられるところがある。ジンはボタニカルを使用したアルコール飲料なのでどちらかと言えば山の酒という印象があったが、シーウィードという海の材料も使ってしまうというところが面白い。それをまたあまり海藻を食べるイメージのない西洋人が作っているというのも興味深かった

その他にも蕎麦打ち、愛用している京都の包丁と新選組南アフリカのレストランへ呼ばれて料理した話やフランスのビジーでの修業時代の話など、何を聞いても面白い話ばかりだった



訪問時はランチは4500円のコースだけで営業しているということだったが、冒頭に書いた通りやはりこれはお値打ちだろうと思う。また何かの機会に再訪したいレストランだ



Les Ailes des K
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