アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

第4回JSAブラインドテイスティングコンテスト (中編)


今回は、初めて「JSAブラインドテイスティングコンテスト」に参加した時の様子について書いてみたいと思う

東京でのコンテスト会場は目黒の雅叙園。目黒駅からは歩いて向かった。権之助坂を下り、途中、目黒川に並走する形で南下する道を歩いて行ったのだが、実はこのコースはだいぶ遠回りになるようだ。行人坂という急な坂を下るとほぼまっすぐに雅叙園にたどり着くことができる。帰りはこの道で駅まで戻ることにしたのは、試験を終えて帰路につくコンテスト参加者の後ろをただ付いて歩いた結果にすぎないのだが

雅叙園には初めてやって来たのだが、その要件がブラインドテイスティングコンテストであるというのも何だか不思議な感じはする。名前は以前から耳にしてたが、いずれにしてもただのこじんまりとした結婚式場か何かだと思いこんでいた。実際にはかなり豪華なホテルだった。敷かれた絨毯もフカフカだ。感激し、思わず内装の写真を撮ってしまった(ついでに言うと、試験会場の前でカブちゃんに頼んで記念写真のようなものも撮ってもらった。他の受験生が見たら少し異様な光景だったかも知れない)




ホテル入口付近の「本日の御宴席」掲示板をみるとコンテスト会場は2階だった。コンテスト以外の”御宴席”予定を見るとそのほぼすべてが結婚式のようだ。それらの御宴席予定の一番上に「第4回JSAブラインドテイスティングコンテスト予選」と書いてある。どの結婚式の予定よりも上に、だ

1階のカフェやレストランの間を抜けていき、奥の方にあったエスカレーターで2階へ上がる

会場の前には受験番号が書かれた紙が掲示されていて、これを見ると自分の受験番号と座席の場所が確認できる。この日は2か所にこの紙が掲示されていたが、それを合わせるとおよそ150人~200人くらいだろうか。昨年は470名くらいの応募があったそうだが、いまこの記事を書いている段階では今年何人の参加になっているのかは分からない。いずれにしても東京だけでもかなり多くの人が参加しているということだけは分かる




受験票によれば受付(開場)は11時から。試験は11半から開始だが、その前の5分間(11時25分から11時30分)でガイダンスがあるようだ。11時頃からすでに参加者が入り口の前に並び始めるが、実際に会場への入場が始まったのは11時15分辺りからだったように思う

受付開始までは各々会場付近で過ごすことになる。団体で来ている人達は同じワインスクールの仲間だったりするのだろうか。多くの人は個人での参加だったように見受けられるものの、そんな人の中にも知り合いを見つけ声をかけたりしている姿も見受けられた。情報交換ができる仲間がいると便利だなという気はする。知の集積があると掛け算で情報量も増えるだろうし、コンテスト後に答え合わせもできる




開場の前でカブちゃんと別れてしばらく独りで時間をつぶしてから、入り口前で係の人に体温を計ってもらい、受験票を見せて会場に入る

自分の席を探して着席し、周りを見渡すと結構な数の空席が目立つことに気づいた。実際試験が始まっても空席は結局空席のままだったから、申し込みしても会場にやってこない人がたくさんいるということがわかった。これがコロナ影響による今年特有の現象なのか、それとも毎年こんなものなのかまでは分からなかったが、どちらにせよ参加費がもったいないと思う

それと、過去の出題を見るとワインが4種にその他飲料が2種だったのだが、入場時にすでに席に置いてあったグラスを見るとその全てがどう見てもワインに見える。この瞬間までどのようなものが出題されるかは事前に分からない。受験票にも書いていないし、何種類の飲料が出てくるのかも分からない。分かっているのはただそれがブラインドテイスティングのコンテストであるということだけだ。それも含めてコンテストの一環だろうと思うのでいまさら何も動揺することはないのだが、しかしコンテストの直前まで不慣れな日本酒や蒸留酒のことを付け焼刃で記憶しようとしていた自分の行動が一瞬で無意味になった瞬間でもあった

とにかく、今回からコンテストの出題傾向に大きな方針変更があったということだろうと思う




開始5分前になりガイダンスが始まってから気づいたのだが、よく見れば目の前のグラスは5種類しかない。左から白が2つ、ロゼが1つ、そして赤が2つ。6脚目のグラスがないことに気づかなかった自分は、やはり不慣れな状況に動揺していたのかも知れない。そして最後の1杯は試験直前になってようやく、うやうやしく、目の前に運ばれてきた。それはスパークリングだった。なるほど

ところで他の参加者のグラスに入っているワインの量の方が自分のものよりも多く見えるのは気のせいだろうか。いや、やはり確かに少ない気がする。左斜め前の男の人のグラスの方が多く見えるし、右の女性の方が多く見える。しかし左隣の男性のグラスは、自分と同じようなものか

この時点では少しでも量が多い方が有利じゃないかといった、何かポイントがずれた発想をしていたかも知れないことに気づいたのは、コンテストが終わってから周りを見渡すと多くの参加者がその大部分を残したままにしている光景を目にした時だった。ブラインドで出されたワインはすべて飲み干すものではない、といった暗黙のルールでもあるかのように。あるいは、全量を飲んでしまうのはブラインドテイスティングのずぶの素人であることの証であるかのように




コンテストが始まる前にグラスに入った液体の外観を確認することはできる。グラスに触ったり香りをかいだりすると失格になるらしい。写真も撮ろうと思ったのだがスマートフォンなどを出しておくことも禁止だということで、勘違いされても困るので控えることにする

そしてまたこの時に気づいたのだが(新しい体験はいろんなことに気づかせてくれる)、時計を持ってくるのを忘れていた。これまでいろんな試験を受けてきた中で時計を忘れたという経験はこれが初めてだった。制限時間は30分ということだったが、どうしよう。6種類で30分だからまあ十分な時間があるとも思いつつも、少し不安がある。ガイダンスによれば終了5分前(つまり11時55分だ)にアナウンスがあるという。隣の席の人が腕時計を机上に置いているが、文字盤が僕とは反対を向いて傾いている。時間が見えない。左斜め前の男性も腕時計を置いているが、文字盤が上を向いている。これも見えない

諦めてまた自分のグラスを見るのだが、そういえばロゼの色がやけに赤い気がする。かつて飲んだペランのタヴェルのような色合いだ。ここで気づいたのは、遠くの席に置いてある他人のグラスに入っているワインの色は分かりやすいということだった。自分のグラスのワインを見るよりも、少し離れた席のワインの方が色がよく分かる。このロゼもそうだった。自分のものを見るとそこまで赤く見えないのだが、離れた席のロゼは、やけに、赤い




11時半になり開始の合図があり、一斉にテイスティングがスタートする。まずは口を湿らそうと水の入ったグラスを手に取ったのだが周りを見渡すとこれまたグラスを手にしている人が、少なくとも自分の周辺には、いかなった。最初に水を飲むという行為もテイスティングの定石ではないのかも知れない

とにかく一番左に置いてある、1番目番号が振られた紙の上に置いてある白ワインからスタート。グラスの内側に少量の泡が張り付いていることから若干の発泡が残っているようだ。香りをかぎ、スワリングし、また香りをかいで一口飲んでみる。さっぱりした味わいだ。次に2番目の白ワインのグラスを手にして、同じような手順でテイスティングしてみる。こちらは先ほどに比べるとトップノーズに若干樽のニュアンスを感じる

ここまでの第一印象は1番目がリースリング、2番目がシャルドネだった。この最初の印象は、赤ワインを経由し6番目のスパークリングまで一通りテイスティングを終えてまた最初に戻ってきたあたりで大きくグラつき始めることになる。特に2番目はやけに酸が強い気がする。このような強い酸を感じるワインはシャルドネではないと思うのと、今までにあまり飲んだことのない味わいだがかといって初めての品種でもないような気もしつつも、コンテストの最中にはそれ以外の品種を思いつくことができなかった。もしかしたらアルバリーニョを選択すべきだったかも知れないが、最後まで第一印象の品種から変更することはできなかった。1番目の品種はぺトロールのニュアンスが一切感じられなかったこともありリースリングらしい特徴に欠けていた気もして、これもファーストインプレッションを大事にしそのままリースリングを選んだもののかなり自信がない




続いてロゼだが、その色合いの先入観もあってだろうか、一口飲んだ第一印象はシラーかグルナッシュ。しかしこのワインもよくよく味わいを取ってみるとやけに淡い。かなり味が薄い。こんなにはかないロゼはこれまで飲んだ記憶がない。とするとローヌから南仏にかけて辺りのロゼを想定することは困難だろう。ましてニューワールド辺りを選ぶことも難しい。結局、いままで飲んだ記憶がないものの日本(長野)のメルロを選択した。ベリーAも頭をよぎったもののベリーAらしさがみじんも感じられなかった。これも全く自信がない。長野でメルロのロゼを作っているのかすら分からない。長野県におけるワイン生産状況を確認するため帰り道にスマホで調べてしまったほどに、自信がない

続いて赤ワインだ。4番目の赤ワインは、これは香りも味わいも過去に経験したことのあるようなものだった。これはあまり悩まずテンプラニーリョを選んだ。気になるのは前回2019年の予選でも登場している品種だということだったが、今回は6品種すべてがワインであることだし、重複しても別に問題ないだろう。ブラインドテイスティングとは「当てに行くよりも積んでいくものだ」という話もどこかで聞いた。実際に自分が”積めて”いるのかどうかは別にして

5番目の赤ワインはこれといった特徴がないワインだった。「普通」。それがこのワインの印象だった。この特徴のなさはカベルネ・ソービニヨンほどには目立たず、かと言ってシラーやテンプラニーリョほどの個性もない品種、メルロを選んだ。いまこれを書きながらグルナッシュの可能性を疑うことも考え始めているが、やはりそれとは少し違う気もする




そして最後のワインはスパークリングだ。香りをかいで味わってみるが、極めてノーマルな印象のスパークリングだった。飲んだことがあるような味わいだし、とくに意外な特徴といったものは感じられない。逆にそれはワインを特定する上では困難な状況ということでもある。この普通さからカバを想像した。ただし解答用紙にはブドウ品種は1種類を記載するようになっている。カバだとマカベオ、チャレッロ、パレリャーダ、それにシャルドネの可能性もある。ここではマカベオ(ビウラ)を選択。マカベオ単体のカバがあるのかどうか知らないが

順番が前後した気がするが、解答用紙の回答欄は以下のようなものだった

・品種
・ビンテージ
・生産国
・生産地
・小売価格

恥を忍んで僕が作成した回答を披歴すると以下のようなものになる

1.リースリング、2019年、オーストラリア、クレアバレー
2.シャルドネ、2018年、フランス、マコン
3.メルロ、2018年、日本、長野
4.テンプラニーリョ、2018年、スペイン、リオハ
5.メルロ、2018年、チリ、マイポバレー
6.マカベオ、2018年、スペイン、カタルーニャ

価格はもう覚えていないのだが概ね2000円前後で記載したと思う。普段飲んでいるクラスの上限に近い価格だが、コンテストで2千円では少し安すぎたかも知れない。ヴィンテージは全く分からないのでおよそ2年前で揃えた。ただしリオハと書いておきながら2018年という回答はまずかった気がする。カバに至ってはコンテスト会場で”ぺネデス”が出てこず、悔しいがカタルーニャと書いてしまった。繰り返しになるが、2番目の品種はシャルドネではないと思う

こうしてあらためて回答を並べてみると極めて凡庸な回答が並んでいるような気がする。どれをとってもいまいち自信がない。過去にはルカツティリやツヴァイゲルトレーベが出たコンテストだ。あまりの凡庸さにすべて外れているような気がする


終了後しばらくのあいだはあまりの出来の悪さに打ちひしがれてしまった。これまでのおよそ15年近くにわたり、いったいオレは何をやってきたのか。味のことなどまったく分からないまま、分かった気になってワインを飲んできたうえブログであれこれ勝手なことを書いてきただけなんじゃないか、というような。反省せざるを得ない気持ちでいっぱいだった。これからは1本1本を大事に味わい、香りと味わいの印象を記憶にとどめるようにしたいと思った


結果発表は9月18日(金)の15時頃、協会のホームページ上で開示されるようだ。ただし会場での説明によると今回は正答が開示されないらしい。これまでの第3回まではおよそ品種や産地といった基本情報はホームページで確認できたのだが、それが今回は公表しないという。これは本当だろうか。それではあまりにも気持ちがすっきりしない。他の参加者も同様だと思う。どんな品種が出たのかはブラインドテイスティングに参加した誰しもが知りたいことだろうと思うし、結果を知ることでまた新しい経験となるはずだ。消化不良で終わりたくない。教会には是非とも翻意頂き、正解を掲示してくれることを切に望みたい


いずれにしても、結果や、いかに



第4回JSAブラインドテイスティングコンテスト (前編)
第4回JSAブラインドテイスティングコンテスト (後編)