アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

ショパン @神田


コロナ禍の収束はいっこうに見通すことができず、従って在宅勤務の終わりも見えない状況が続いている

会社からは「通勤手当の解約を」求められ、もし出社するようなことがあればその時に「実費で精算せよ」とのお達しが到着した。コスト面を考えれば当然の働きかけだと思う。もしかしたらこのまま定年まで在宅生活で行くのかも知れない、と思い始めている自分がいる。まじめな話

通勤手当がないということは通勤定期も購入できないということになる。週末に便利に使っていた通勤定期券。それがない以上は自腹で移動せねばならい。これも当然のことだ。であれば週末の移動はフリー切符の方が便利そうだし、フリー切符を買った以上はその元を取ろうと行動するだろう。それも普通のことなんじゃないだろうか


そんな訳で、とある8月の週末に東京メトロの24時間券(600円)を購入し都内を移動してみた。本投稿はそんな一日の記録の断片である

まず最初に向かったのは淡路町東京メトロを下車しておよそ5分程度で到着したのがこちらの喫茶店




先日投稿したドースイスピーガもそうだが、靖国通り沿いは何度も歩いているにも関わらず一歩わき道に踏み込むと別世界が広がっている。そんな経験をここでもしてしまったような気がする

神田須田町は確かにあまり探索したことがない。通りの一角ごとに老舗のような佇まいの落ち着いた店構えの店舗がそこら中に存在している。蕎麦屋にお菓子屋など、人が列をなして並んでいる光景も目にした

そんな一角にあるこちらの喫茶店も歴史ある店の一つということになるのだと思う




ブレンド珈琲(550円)は一口飲んで驚いた。強い酸味がまず舌の上に強い印象を与える。反面、その酸こそがスッキリとしているので爽やかさすら感じる。嚥下した後に舌の上の余韻を味わっていると、今度は深いコクときれいで穏やかな苦味が静かに訪れる

複雑な印象を与えるコーヒーだ。壁に取り付けられたスピーカーからはショパンの演奏がいままさに佳境を迎えている。まるでコーヒーのめくるめく味わいの変化をさらに煽っているかのような錯覚を感じた




ショパンの名物らしい「アンプレ」。”アンプレ”とは餡(あん)をプレス(サンド)したもの、という意味だろうか。カブちゃんと2つ注文をお願いしたところ「一つのテーブルに1つしかオーダーできません」なんだそう

こし餡にちかいつぶ餡。滑らかで甘みもしっかりしているのだがバターの塩気と相乗し好相性だ。パンは表面だけ揚げたような感じに見える。多めの油を敷いたフライパンで焼いているのかもしれないが、作成しているところをのぞき込むわけにもゆかず厨房の”音”だけを耳をすませて聴いていたが、結局どういう風に作っているのかよく判らなかった

いずれにしてもこのパンが”アンプレ”のキモなんだろうという気がした。サクッとしたところもおいしい。そう言えばこの揚げたようなパンと餡の組み合わせは何かに似ている。そうだ、僕が好きな”あんドーナツ”に似ているんじゃないだろうか




チーズトーストは厚切りのパンの横に滴るチーズが見た目にも食欲をそそる。シンプルなトーストだが、少し酸味のあるチーズはショパンの同じく酸味のあるコーヒーともよく合う。よほど質のいいチーズを使っているのかも知れない





たまたま訪問した喫茶店だったが大変な満足感を得られた気がする。老舗といってもいいこうしたレトロ喫茶は、都内に数多いとはいえだんだんとその数は減るばかりだと思う

カフェではない、レトロな和風喫茶がレトロを名乗るには当然のことながら歴史が不可欠だ。しかしこうした形態の喫茶店は現代において新たにオープンすることがあったとしても、その例は数少ないのではないだろうか。ゆえに時の経過と共に総数自体は減っていってしまっているように思う








CHOPIN
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