アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

アバ @江戸川橋





店舗が本郷にあったころに何度か訪問したことのあるアバ(かつての記事はこちら及びこちらをご参照)。本郷の店を閉め、江戸川橋にシャルキュトリー専門店としてオープンしたという情報があったので散歩がてらに出かけてみた

江戸川橋の商店街からは少し離れた場所にある。江戸川橋通りを西側に渡った場所だ。外観はこじんまりとした入り口で、中に入るとカウンター席が見える。もともとは珈琲の焙煎機が置いてあったのではないかと想像されるガラス張りのスペースが奥の方に見える。ただ店内はお客さんに開放している感じがない。商品は店に入ったすぐの場所の冷蔵庫で保管されていて、店主は奥の厨房で何やら作業をしている

アバのすごさは以前のブログに詳しく書いてあるからそちらを参照頂ければと思う。久しぶりに見た店主はよく日に焼けていて、数年前に比べると(当たり前だが)いくぶん落ち着いた雰囲気になっていた。しかし生気の宿る目つきは相変わらずだった

「飲食はもう絶対やらないです」。むかし本郷のワインバーへ何度か足を運んだ、という話を振ったときに出てきた店主の言葉だ。「もともとこっちをやりたかったんで」という”こっち”というのは食肉加工とその直販ということだと理解した。僕の耳が聞き取りを間違えていないならば”医者の免許”というフレーズが聞こえた気がするが、店主が言うにはシャルキュトリーの専門店を始めるにあたり特別な免許の取得のために5年もの歳月を要したとのことだった。ほかに同じような免許を取得したプロフェッショナルというのはほとんどいないらしい

鳥や獣の羽根をむしり、解体し、食肉として適切な加工を施し客に出す。その「大地から食卓へ」という人間が生活していくうえで必要なリアルな一連の流れを感じることは難しい。スーパーに行けば肉類はきれいにパッケージされて販売されている。どこで採れたものか、どう解体されたか。そんなことに現代人の日常生活では気づけるようにはなっていないし、気づく必要も必然性もない。そうした普段は見えないがどうしても生活に必要なプロセスの中に身を置いて、自らの手で執行しているという頼もしさがこの店主にはある

おそらく先の「免許」は、この特殊な技術を駆使するうえで必要なものなのだろうと思う。では例えば飲食店一般で提供されるパテ類とアバのパテ類とは何が違うのかと問われると素人にはその食品の見た目からは分からない。話しぶりからは加工食肉販売の専門店として始めるにあたり免許が必要だという風にも聞こえた。その違いを確かめる手段としては唯一、実際にアバのパテを食べてみるということだ。とにかく生々しい、というと語弊があるかもしれないが、肉そのものの味がダイレクトに伝わってくる気がする。他店のパテはスーパーで売っている加工肉に距離が近いかも知れない。しかしアバのパテはむしろまだその鳥なり獣なりが生きていた頃の状態に近いという気がする。これは実際に食べてみないとわからないことだ



Abats(アバ)
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