アルさんのつまみ食い4

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サントリー塩尻ワイナリー訪問 ~2017年夏~ @長野



七夕の金曜日に開催されたラグランジュのセミナーに引き続き、翌日の土曜日もブロガーさん達と一緒サントリーさんのアレンジによる塩尻ワイナリー見学へ参加させて頂きました。ワイナリー見学は登美の丘ワイナリー訪問に引き続き2度目の参加になります

以前調べたことがあるのですが、サントリー塩尻ワイナリーは一般見学の受け入れを行っていないのですよね。なのでこういった機会でもないと見学ができないのです

※意外なほどにシンプルな外観のサントリ―塩尻ワイナリー。一般の見学はできず、秘境のようなワイナリー



塩尻ワイナリーの設立は1936年(昭和11年)。もともとコンコードなどを生産していた地元の生産者(五一ワインの林五一氏や信濃ワイン創業者)がブドウの売り先を見つける目的もあって鳥井信治郎氏に会いに行き、誘致したことがきっかけだったそうです。赤玉ポートワイン生産に始まるワイナリ-の歴史や、サントリー向けにブドウを生産する地元の「赤玉出荷組合」から買い付けを行う生産体制など、塩尻ワインについてより深い理解ができるツアーとなりました


その中でも特に思い出深いのは、岩垂原でブドウ生産をしている山本園の訪問。オーナーの山本博保さんは「赤玉出荷組合」の組合長で、お父さんの代から組合長を務める「山本園」の2代目。そんな山本さんから直々にブドウ作りについて話を聞く機会を得ました。だいたい、国内外どこのワイナリーに出かけても栽培家に直接出会うことはめったにありません。そして、サントリーさんの趣向によりその山本さんの畑で作られたブドウを使用した「塩尻マスカットベリーA」「岩垂原メルロ」を参加したブロガー含め全員で頂きました。ブドウ生産者、ワインメーカー、そして我々消費者が一堂に会してその畑で作られたワインを飲む。こういうことって、あまりないんじゃないかな

※写真右が山本博保さん。左はサントリー塩尻ワイナリーの篠田健太郎所長


この日は非常に天気がよくて今年一番となるような暑い日となりましたが、そんな炎天下の中でもサラサラと吹き抜けていく風を感じながら岩垂原のブドウ畑でワインを飲んだことは貴重な体験となりました




という訳で、塩尻ワイナリーツアーです



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サントリーさんから事前に送られてきた切符の指定通り、8時に新宿駅を出発するあずさに乗車。まだ梅雨が明けきらない季節のこぼれ落ちそうなくらいに深い緑の山間を抜け、走ること約2時間半。目的地となるワイナリーは塩尻駅のすぐ目の前にありました。心なしか東京よりも空気が軽くて涼しいような感じがする



すぐにテイスティングルームを備える部屋へ案内され、そこで本日の日程を教えて頂きました

午前中:
・ワイナリー見学(発酵室、貯蔵庫)
・岩垂原 山本園

午後:
・会食「ヒカリヤニシ」

※どこのワイナリーでも必ず所有しているテイスティングルーム


熱中症対策に渡された「サントリー天然水」を手に、さっそく見学に出かけます




◆貯蔵庫

貯蔵庫の屋根は2層構造になっていて、その間にもみ殻を入れることで断熱をしています。また外壁には盛り土がしてあり、断熱効果を高めている

塩尻ワインにはこちらの貯蔵庫をデフォルメしたものがラベルデザインに使用されているそうです


このおかげで、夏は外の気温が35度を超える暑さでも20度以下に、また氷点下になる冬でも5度以上に温度を保つことができるのだそうです。天然の冷蔵庫といった感じですね

※貯蔵庫を横から見ると盛り土をしている様子が良く判る

※訪問したこの日はとても暑い一日となりましたが、温度計の針はぴしゃりと16℃を指す



貯蔵庫に入るには少し階段を降りるようになっています。地面を少し掘ることによってさらに温度を下げる工夫をしているようです


貯蔵庫内部にはもともとはブランデーなど蒸留酒を保存していた名残りである金属製の棚が残っていますが、樽のサイズが合わないらしく棚にワイン樽は置いてありませんでした


樽は220L~230Lのフレンチオークがメイン。ただ、中には250Lを超えるミズナラを使用した樽も置いてありました。ミズナラ樽は5年くらいは使用するそうです

※内壁が外に向かって傾斜しています。盛り土の圧力に対応するためでしょうか

ミズナラ樽。よく見ると栽培家である山本さんの名前が書かれています




◆発酵室

あえて少量のタンクにすることで、区画ごとにワインを仕込むことができるよう工夫をしているそうです。収穫の時期には農家が軽トラックでブドウを運び込み、選果台を2台入れてブドウの選別を行っているとのこと


サントリーという大企業のイメージからは思いのほか発酵室の規模が小さく感じましたが、いまはこの規模で品質のよいワイン造りを志向しているということなのでしょう。今後さらに需要が増えてきた場合は、材料となるブドウの調達(農家によるブドウの供給)と設備投資が課題になりそうです




この後はバスに乗り、岩垂原の山本園へ向かいます


バスの車中での篠田ワイナリー長の話によれば、この時期は雨もあって気温も高いのでブドウの木が一日に10~15cm程も伸びるらしく、仕事が集中する時期でもあるのだそうです。それから、ワイナリーがこれくらいの規模であるが故に酒税の処理からイベントなどでのPR活動(今回の我々の訪問も含まれるのでしょう)まで何でも自分でやるそうです

ヴィンヤードでの仕事にバックヤードでの事務仕事。とても忙しいけれど、ワイナリー運営の全てのことに関わることができるのでやりがいはあるとのことでした。企業に勤めるサラリーマンの僕が聞いても「うんうん、そうだよなあ」と同感できるエピソードでした



そんな話を聞いているうちに、バスは井筒ワインや五一ワインを通り過ぎ、奈良井川あたりまで下ってきました。標高600m。ちょうど登美の丘ワイナリーの一番高い場所である展望台がある所と同じくらいの高さです。ここから再びバスは丘を登っていきます

※桔梗大橋西の交差点。この辺りで標高690m




塩尻ワイナリーを出てから約20分。バスは辺り一面がブドウの木が覆っている山本園の横に到着しました

※農園への入り口。この奥に山本園所有のヴィンヤードが広がっていました




◆山本園

山本園のある場所の標高は約730m。畑の草の下には土が約5cm程しか堆積していないらしく、ゲリラ豪雨になっても水が貯まらないほど水はけがよいそうです。そして、気象予報士の予報が当たらないくらいに変わりやすい気候だけど、風がよく吹くのでブドウは病気になりづらい


とはいえ、今の時期は病気になりやすく最も難しい時期だそうです。晩腐病やべト病にならないように葉っぱをむしり、光が当たり風通しも良くしてやるなど、とても手間がかかる

※ひと房のブドウに対して15枚の葉になるように調整。こちらはメルロの木ですが陽がよく当たっています



そう、ワイン用ブドウの栽培は非常に手間がかかる

「20年前にサントリーから“作ってみろ”と言われてブドウを植えてみた。おれは無能で仕事嫌いなんだけど、ご飯食べるために仕方なく作ってみたら賞なんかをもらったりして」

「(メルロなど)始めは名前も知らないブドウだった。シャインマスカットや巨峰並みに手間がかかるけど、金には代えがたい魅力もあるので今はあきらめてやってる」


ひょうきんな山本さんの話だけを聞いていると受け身の姿勢でブドウ作りに取り組んでいるように聞こえるし、所長の前でも平気で「サントリーが言うから仕方なくやってる」とズケズケと話す山本さんではありますが、そんな話しぶりの端々に自信のようなものも感じられます。また、そんな山本さんとサントリーとの関係も、率直にお互い意見を言えるほどにうまくいっているのではないかな、と思いました

※ベリーA。梗の部分が赤いのが特徴




ワイン用ブドウの栽培は非常に手間がかかるけど、手間をかけた分だけよいブドウができ、よいワインができる。注目度も上がり、我々のような人たちも山本園を訪問するようになったりして、新しい展開になっていく。もともとあまりワインを飲まなかった山本さんも、最近はワインを飲むようになってきたし、若い人たちがどのようにワインを飲んでいるのかを勉強するために市内のレストランにも顔を出したりしているそうです。本当に「仕方なくブドウ作ってる」と思っているような人がそんなことをするはずがない。やはり山本さんは根っからの勉強家だし、自分の仕事に誇りを持っているんだということが良く判りました



山本園を後にし、ツアー最後のイベントである「ヒカリヤニシ」での会食に向かいます。これには山本さんもご一緒されるそうで楽しみです


松本市内にある店舗までバスで約40分ほどかけて向かいました



◆会食

会場となったヒカリヤニシは、外観は歴史を感じさせる佇まいで、豪華な庭とモダン作りの内装を備える建物。新郎新婦の姿も見かけたから、披露宴に使うといった需要もあるのでしょう。地元ではしっかりとしたステイタスのある店のようです






飲んだワインについて記載しておきます



ジャパンプレミアム信州産シャルドネ(2016年):

小布施と千曲のブドウを使用している。樽はかけずにタンクで発酵、熟成させる。ホールバンチで通常の2~3倍の時間をかけて絞ることによってきれいで最適な果汁を取ることができるのだそうです。フレッシュでフルーティーな青リンゴのような香り。シュールリーでアタックに集中したワインとのことでした



塩尻メルロ・ロゼ(2015年):

サーモンピンクのきれいな色合い。海藻のようなヨードの雰囲気が感じられ、すっきり軽い苦みが引き締める。幅広い料理を受け止められそう。ロゼはフランスでも流行っているようで、確かにパリのスーパーに行ってもロゼの陳列スペースがかなり大きめに取ってありました。世界的に流行っているのかな



塩尻マスカットベ-リーA(2013年):

柔らかく穏やかな印象ながら旨みがある。滑らかできれいな酸が乗っている。香りはベリーAらしいキャンディのようなトーンがありますが、味わいはサッパリとした味わい



岩垂原メルロ(2013年):

穏やかでバランスが取れたワイン。果実味もありますが、ダシのような旨味も感じられます。こういった旨味のあるワインだからこそより日本食にも合わせやすそうな気がします


会食に同席した山本さんからは、ワイン造りにとどまらずご自身の生活にも踏み込んだ様々な話を聞かせて頂きました。意見もはっきり仰る方ですが、一方では、詳細は書きませんが、ワイン用ブドウの生産を手掛けることならではの課題であったり苦労するようなことをたくさん抱えてらっしゃる。そうした課題や苦労などは、これからも永続的にワイン生産していく使命を負った篠田ワイナリー長とも共有されているのだろうなと思ったりしました

※途中、篠田ワイナリー長もたじたじになるほど忌憚のない率直な意見を述べる山本さん。なかなかいいコンビネーションだったと思います



最後に握手させて頂いた時の手はとても大きく厚みがあり、またパワフルで、温かかった。塩尻で作られるサントリーのワインは、まさに僕にとって「顔の見えるワイン」になったように思います

※ヒカリヤニシで飲んだワインたち




最後に、ワインに合わせた「ヒカリヤニシ」の料理も載せておこうと思います




セビーチェ:豚皮、パプリカ、鯛、エシャロット

スポンジ:バルサミコ、信州サーモン、なら漬け

緑の野菜:スナップエンドウ、烏賊、茴香(ウイキョウ)、ボッタルガ

アスパラ:帆立、卵黄、トリュフ、雲丹

玉葱:淡路島の玉葱

鰹:パプリカ、ベルジュ、地野菜、ベーコン

仔羊:浅利、グリンピース

ガスパチョ:カルピス、苺、林檎、フランボワーズ、ジャスミン

さくらんぼと無花果




今回もこのような機会をご提供頂いたサントリーの方々、そしてツアーに参加し一緒に盛り上げてくれたブロガーの方々にあらためて感謝したいと思います





最後に、9月5日に発売される「サントリー塩尻ワイナリー」シリーズのラベルには塩尻ワイナリーの「貯蔵庫」がラベルデザインに使用されているそうです

少しだけデフォルメされているようだけれど、確かによく見るとうっすらと貯蔵庫が写っていますね






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