アルさんのつまみ食い4

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蝦夷地へ(後編) ~空知地方のワイナリーを巡る~


5月のある月曜日、札幌駅前でレンタカーを借りて空知地方へ向かいます


訪問予定のワイナリーは以下の通り7つ

鶴沼ワイナリー(北海道ワイン
・TAKIZAWAワイナリー
・YAMAZAKIワイナリー
・宝水ワイナリー
・10Rワイナリー
・KONDOヴィンヤード
・NAKAZAWAヴィンヤード


とはいえ、北海道のワイナリーは欧州の規模な大きなワイナリーに比べればサイズが小ぶりかほぼ個人経営のようなところが多く、僕のような個人が訪問して畑から醸造所から熟成庫からと案内してもらいながら見学するということはあまりできません。実際には、事前に予約しておけば醸造所を見せてくれたりきちんと説明を受けたりということもできそうでしたが、車で移動するためアポの時間を正確に指定できなそうになかったということと、ほぼオーナーが自分で経営しているみたいなところが多いこともあってプロでもメディア関係者でもない人がわざわざアポを取って訪問するというのは少し荷が重い

今回は空知地方だけ回ってみましたが、それなりに観光客を受け入れられる準備ができていたのは宝水ワイナリーくらい。あとは小さなワインショップがあって少しだけ説明を聞くことができるか(鶴沼とTAKIZAWA)、そうでなければ建物の中にすら入ることすらできず(YAMAZAKI(これは単に休みだったせいだが)とKONDO)、場合によってはワイナリーを見つけることすらできないこともありました(10RとNAKAZAWA)


そんな訳で、主な目的としては、

・空知地方のワイナリーがいったいどういった場所にあるのかを確認してみる
・ワイナリーに入れれば入ってみる
・ショップがあればワインを買ってみる
・ワイナリーの方から話が聞けそうなら話をしてみる

というような、本当はワイナリーを外から様子眺めるだけでもいいんだけど場合によっては間口の広さに応じてもう少し突っ込んでみようかな、というきわめて控えめなものを設定しました

あとは5月の爽やかな北海道をドライブするだけでも十分に楽しいだろうし、僕のようにレアな目的を抱えて広大な大地を突っ走るというのも面白いんじゃないか、というのもあります


だいたいの場所を地図で確認すると以下の通り。距離にしておよそ約170km。さすがに北海道は広いんだけどこのくらいの距離であれば車を使って一日でざっと回ることはできそう。千歳空港20時30分発の飛行機には乗らないといけないので安全運転で、急ぎます





鶴沼ワイナリー

8時過ぎに札幌駅前を出発し、275号線をひたすら北上します

札幌を出発して40分も走るとだんだん家もまばらになってきて少しずつ広大な北海道らしい景色へと変わっていく。途中、来年2020年5月に廃線になることが決まっている札沼線学園都市線)と並走し、向こうからトコトコと可愛らしく走ってくる電車とすれ違ったりしながら、まず最初に向かったのが北海道ワイン鶴沼に持つワイナリー


北海道ワインのホームページを見て鶴沼ワイナリーでは有料・無料の見学コースがあると思ってやってきたのですが、実際には直売所がポツンとあるくらいで、それ以外は事務所や作業場のような建物があるくらい。想像していたのと全然違うなぁと思いながらとりあえず車を止めて直売所に入ることに


直売所に入ると正面の壁沿いにワインが置いてあり、左にはレジカウンター、右には大きな窓から畑を望むことができる。手前の壁にはワイナリーを紹介する展示物などがあるのですが、月曜日とはいえ客は僕かいないしとても見学コースがあるように思えない。あとから入ってきた係の女性に「自由見学ができるというのは、こちらの直売所と、あとは畑なんかは勝手に見てよいのですか?」と聞いたら「見学?畑は勝手に入ってもらったら困ります」という感じで、何とも話がかみ合わない。「いや、畑を見るっていっても道路から眺めるくらいのつもりですが――」

話し始めてしばらくしてから気づいたのですが、どうやら見学コースがあるのは小樽にある北海道ワイン醸造所であって、ここ鶴沼はワイナリーという名前がついていても実際には畑と直売所があるだけで仕込みはすべて小樽でやっているらしいのです

自分としたことが・・


鶴沼ワイナリーは約450haの広さがあり、聞けばかなりの種類のブドウを育てているようです。その中から気候にあった品種などを選んで行くのだろうと思いますが、いずれにしてもこの鶴沼ワイナリーで育てたブドウは北海道ワインの「鶴沼シリーズ」のワイン用ブドウとして使用されるようでした




鶴沼ワイナリー
住所:北海道樺戸郡浦臼町於札内428番地17
電話:0125-68-2646




TAKIZAWAワイナリー

続いて向かったのがここ。ナビの案内に従っていくとワイナリーの裏側の山の砂利道を走らされます。この道間違ってるんじゃないか、いったん戻ろうかな、こんなところ一人で走ってて不安だぞ・・という気持ちが出てきたところをぐっと我慢してもう少し走らせるとようやく看板が出てきた。このワイナリーに来るには12号線から美唄三笠線に入る方がいい。あるいは次に訪問したYAMAZAKIワイナリーとは目と鼻の先なので、先にYAMAZAKIワイナリーに行ってからナビで来ればおそらくすぐ来れると思う





さっそくワインショップに入ってみると7種のワインが並べられています。そして女性の店員さんが一人店番をしておられました

ワインはピノノワール、ソービニヨンブラン、ロゼ、ミュラートゥルガウ、デラウエア、ナイアガラ、旅路ロゼといったワインがあります。「旅路」もブドウ一種らしいのですが初めて聞いた名前。ワインには余市で生産されたブドウをここまで運んできて仕込んだものと、目の前に広がる自社畑で作られたブドウから造られるものと、大きく2種類あるようです。いわゆるネゴシアンものとドメーヌものといった感じでしょうか。せっかく三笠まで来て余市ブドウのワインを買うのもどうかなあなどと考えているうち、店員さんから「ちょうど今日新ヴィンテージをリリースしました」と教えて頂いたのが2018年の旅路ロゼ(スパークリング)。これも何かの縁かと思い、このスパークリングワインを1本購入しました


ちょうど訪問した時に役人らしき若者がやってきていて、生産本数などの調査?のようなものをしていました。国税庁のホームページでは果実酒の生産量などの情報を閲覧することができるのでこうした統計調査の一環なのだろうか。ワイナリーの仕事は多岐にわたるようです。忙しいわけだ

※黄色い花が広がる畑が印象的な景色でした




TAKIZAWAワイナリー
住所:北海道三笠市川内841-24
電話:01267-2-6755




YAMAZAKIワイナリー

続いて訪問したのがYAMAZAKIワイナリー。TAKIZAWAワイナリーから車でほんの5~10分程度の距離にある。ただあいにく月曜日は閉まっていて入れず。残念・・


YAMAZAKIワイナリーのある丘の上からいま来た道を振り返ると、先に見える丘の中腹に先ほど訪れたTAKIZAWAワイナリーがすぐそこに見えています(畑の黄色い花が目印になっている)。空知のワイナリーにしてはかなり近接した珍しいケースという気がします。またワイナリーが向かい合っているということは、他にも離れた場所に畑を持っているとはいえ、少なくともこの場所ではそれぞれのワイナリーで斜面の方向がほぼ真逆だということですね



YAMAZAKIワイナリー
住所:北海道三笠市達布791-22
電話:01267-4-4410




宝水ワイナリー

宝水ワイナリーは比較的ホームページの情報が充実していて地質や気候などのテクニカルな情報も載っている。ワイナリーで話を伺ったところによるとこの辺りははるか昔は海の底にあったそうで、アンモナイトの化石なんかもよく見つかるらしい。そういえば「三笠はアンモナイトが有名」という話を聞いた覚えがあることを思い出した。炭酸カルシウムなどを含んだ土壌から造られるワインにはミネラルも感じられるそうです



大泉洋主演の「ぶどうのなみだ」という映画のロケ地にもなったというワイナリーにはその痕跡が今でも残されていて、もし興味がある人がいればさらに楽しい場所なんじゃないでしょうか。まだ観たことがないので今度DVD探して観てみたいと思います


ワイナリーの建物から東の斜面を見下ろすと30号線、そしてその先の丘は牛の放牧地になっているのが見える。北海道らしい、雄大でとても素晴らしい景色が広がっています


9haの畑(ショップの方は何度も”900ha”と仰っていたがどうみても900haもない。あるいは聞き間違いだったのだろうか・・・)は各ブドウ品種ごと細かく細分化されていました。こうして畑の下から見てみると緩やかな斜面を利用したとてもワイナリーらしい景色に見えます。他の多くのワイン産地では複数のワイナリーが所有するブドウ畑が連綿と繋がっている景色をよく見かけるのだけれど、ここ空知では一つ一つのワイナリーが離れた場所に点在しているというのが特徴的。もともとブドウ栽培に厳しい気候があるから、もしかしたらここにあえてワイナリーを開いた必然性に乏しいということはあるのかも知れません



宝水ワイナリー
住所:北海道岩見沢市宝水町364番3

電話:0126-20-1810




10R/トアール

宝水ワイナリーの次はココファームワイナリーで醸造をしていたブルース・ガットラブ氏が開いた10Rワイナリーへ向かう。10Rは”カスタムクラッシュ”と呼ばれる受託醸造所の形態をとっていて、持ち込まれたブドウを醸造しワインを作ることを請け負うことを主としているようです

カーナビに住所を入れて行ったのですが、すぐ近くまでたどり着いているはずなのに全くどこに施設があるのか分からず・・。様々な道を行ったり来たりしても看板らしいものも出ておらず、結局10Rワイナリーを見つけることができずにただこうした水田が広がる景色の中で呆然としてしまいました。この辺りにあるはずなんだけどなあ


結局、10Rを見つけることはあきらめて先を急ぐことにしました・・残念




10Rワイナリー
住所:北海道岩見沢栗沢町上幌1123番地10
電話:0126-33-2770




KONDOヴィンヤード

看板が出ていないからそれが果たしてワイナリーなのかどうかパッと見ただけでは判別できない。建物の前に車を止めて、あらためてホームページの写真を確認し、そこに写っている建物と実際の建物を見比べて、ようやくここがKONDOヴィンヤードであることが分かりました。ただ、建物に近づいて行って窓から中の様子を伺うも人のいる気配がない


畑の方に出てみると、今度は2匹の大きな犬が見知らぬ人間の接近を警戒しワンワンと吠えまくる・・(番犬としては正しい仕事をしているね。。)


よく見ると畑には作業している人が何人かいます。もともとKONDOヴィンヤードでのワイン販売は事前予約制、かつ期間限定での店頭販売だけということはホームページを見て分かっていましたので、場所を確認したのみで先に進むことにしました。


小高い丘が連続する空知地方の典型的な景色がここでも広がっていて、眼下はワイン畑ではなく牧草地?のような草原が広がっていました




KONDO ヴィンヤード(モセウシ農場/自宅・ワイン販売所)   
住所:北海道岩見沢栗沢町茂世丑774番地2




NAKAZAWAヴィンヤード

最後の目的地であるNAKAZAWAヴィンヤードはバルコ札幌で頂いた「クリサワブラン」を作るワイナリー。しかし10Rワイナリー同様、ナビでたどり着くことはできませんでした。この辺りは土地が広大なせいだと思いますが住所表示があいまいな気がする

予定していたスケジュールよりはだいぶ早く最後の目的地となる場所までたどり着きましたが、今日のうちに飛行機に乗って東京へ帰らないといけないし、早く札幌へ戻る分には遅刻するよりよほどいい

栗沢のだいたいの雰囲気は感じ取ることができたのでそれで良しとします・・



NAKAZAWAヴィンヤード
住所:北海道岩見沢栗沢町加茂川140





この日は風が強く吹く日で、車を運転しているとハンドルを取られたり時々道路わきの畑などの土ぼこりが吹きつけてきたりしてかなりの悪天候でした。宝水ワイナリーでは「この辺りはいつもこんなに風が強いんですか?」と聞いてしまったほどで、そして東京へ帰ってからテレビをつけたら道東で強風が原因の交通事故が発生したというのをニュースでやっていました。天候はあいにくとはいえ、空知地方のワイナリーを一通り車で回ってみることで土地の様子やどのような場所でブドウを育てているのかといったことが外見だけながらも分かったように思います。よい経験にはなったと思う


次回札幌に来るのは来年かもしれないけれど、今度は小樽・余市方面を回ってみたいなと思っています



※この旅で使ったトヨタヴィッツは軽快でよく走るヤツでした。総走行距離181kmでした