アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

涙の理由が分からない 「山下達郎シアターライブ」


TOHOシネマズ日比谷で上映しているのを見つけてきたカブちゃんがはじめ一人で行こうと思っていた映画だったのだが、「一緒に行く?」と誘ってくれたので僕もいそいそと便乗してついて行ったら凄かった

という話






シュガーベイブのアルバム『SONGS』は僕が生まれた月の翌月1975年4月リリースということになるらしい。そう考えると山下さんが音楽家として活動してきた期間はほぼほぼ僕の人生の長さに重なるということになる。とはいえ物心ついた時から聴いてきた音楽というとイギリスを中心とした英語圏のロックやポップスばかりで、ようやくここ15年くらいはいくつかのお気に入りのJポップなんかも聞くようにはなったもののいままであまり熱心にジャパニーズポップスやロックなんかを聴いた訳ではなかった。ましてやトレンドとは関係のない地平をゆく山下さんの曲は、季節を代表する名曲のクリスマスイブなんかを除くと意識して拾いにいかないとなかなか耳にする機会が少なかった気もする


そんな中、先日車を運転している時にラジオから流れてきた「SPARKLE(スパークル)」のイントロに流れるテレキャスの軽快でキレのいいギターカッティングに一気に心が奪われてしまう瞬間があった。べつに初めて聴いた曲ではない。だけどなぜかその時の気分に爽やかな曲調がどはまりしてしまい、それ以来イントロのAM7/G#m7を繰り返すシンプルなコード進行をひたすら練習してしまったりたりして(そして、うまく弾けなかったりして・・)


何かにハマる前というのはいくつかのきっかけとなるような偶然が重なる不思議な現象が起こる。そんなこれまでの人生の経験則に従うと、映画「山下達郎シアターライブ」はそんな偶然の一つになるのかも知れない。単に過去のライブ映像を順番に流しているだけなんだけど(だけ、ってことはないと思うが実際は)、これがなんだか凄かった。まずギターがめちゃくちゃうまかった。カッティングのリズムとダイナミズムがライブで聴くとかなりの迫力がある。そしてさらに秀逸なのがその歌声。ピッチの良さもさることながら水晶のように透明感があってよく通り、そして弾む声は、決して割れて破綻することがなくバランスを保っている。歌唱はかなり独特な粘りがあるんだけど嫌なものではなく、楽器の一つのように音を出しているというような。演奏に声質が馴染んでいるから日本語が分からない外国人が聴いても歌詞の意味は分からないにしても違和感なくスッと耳に入ってくるんじゃないだろうか。それ以外にはステージをはける時の観客席に向かっての挨拶だったりという姿もなんとも気持ちが伝わってくるんですね。若いころはそうは見えなかったヴィジュアルも(?)お歳を召されてどんどんかっこよく見えてくるのが不思議


一番最後に「さよなら夏の日」が流れる頃には映画「ボヘミアンラプソディ」でも流れ落ちなかった涙がなぜだか猛烈に溢れてきてしまった。まったく涙の理由が分からない。こちらは同じ映画とはいえただのライブ映像だというのに



これからしばらくの間はじっくりと過去の作品をいろいろと聴いてみることにしようと思う、そんな梅雨入りの日の東京の夜