アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

Grant Green "Visions"





ジャズギターを習い始めるまではジャズ・ギタリストというとウェス・モンゴメリーパット・メセニージム・ホールくらいしか知らなかった。ウェスはあまりにも有名でジャズを知らなくてもこれまでも音楽に接する中で至るところで目にする機会があったし、パット・メセニーは高校生ぐらいの時に何がきっかけだったのか覚えていないがパット・メセニー・グループのCDを買ったことがある。ジム・ホールビル・エバンスのアルバム「インター・プレイ」で初めて聴いた

その後いくつかのギタリストの作品を聴いてみた中ではグラント・グリーンというギタリストのプレイとサウンドがとても気に入ってしまい、アルバムもたくさん聴いてきた。ほとんどコードを弾かず単音でガシガシ弾きまくる彼のギタープレイはまたとてもユニークなサウンドで、何度も同じフレーズを繰り返して盛り上げるところはマンネリな感じがしなくもないが聴き続けているとクセになってくる。そしてフレージングも秀逸だ。キャリアの初期はビバップ、後期はファンキーなギタリストに変貌するなどその幅広いプレイスタイルは僕の耳を楽しませてくれるしいまのところ飽きることがない

そんなグラント・グリーンのアルバムの中でもこの「ヴィジョンズ」というアルバムのギターサウンドはとりわけユニークで、中音域が強調されたやや硬質でありながら弾力性のあるサウンドはとても面白い。まるでたっぷり水を張った薄いガラス製の金魚鉢を爪で弾いた時に感じられるような、そんな硬質さと柔らかさが同居しているような印象。そして自分はこのサウンドがかなり好きだと思う。使用しているギターは何だろう。ギブソンのES330あたりだろうか

収録されている曲はどれも秀逸だが、とりわけ3曲目「Mozart Symphony No. 40 In G Minor, K550, 1st Movement(モーツァルト交響曲第40番ト短調)」には驚いた。有名なクラシックなんだけども曲の途中からいきなりファンキーなものへと変わってしまう。あるいは4曲目「Love On A Two Way Street」ではしなやかで流れるようなギタープレイが美しい。そして6曲目はカーペンターズのカバーだ

印象深いジャケットもいい。白いシャツに白いストライプの入った黒のスリーピース。サングラスは白く反射してしまいその表情を伺うことは難しく、袖口のシャツの白さと右の手首からわずかにのぞく腕時計も光を反射しているようだ


「こんなギターが弾けたらな」と思う、そんなアルバムの一つだ




Grant Green "Visions"
1.Does Anybody Really Know What Time It Is
2.Maybe Tomorrow
3.Mozart Symphony No. 40 In G Minor, K550, 1st Movement
4.Love On A Two Way Street
5.Cantaloupe Woman
6.We’ve Only Just Begun
7.Never Can Say Goodbye
8.Blues For Abraham


Personnel:
Grant Green – Guitar
Billy Wooten – Vibraphone
Emanuel Riggins – Electric Piano
Chuck Rainey – Electric Bass
Idris Muhammad – Drums
Harold Cardwell – Drums, Percussion
Ray Armando – Congas