アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

映画「カーマイン・ストリート・ギター」


特別なことは何も起きない。ニューヨークにあるギターショップの日常をただ淡々と描き出す映画だった




ただし、このギターショップ自体が一風変わっている。「カーマイン・ストリート・ギター」のオーナー、リック・ケリーは、ニューヨークの古いホテルやバーが解体されると聞くやその現場を訪れ、数十年、あるいは百年単位で長きにわたり使用されてきて傷やウィスキーのシミが残る都市鉱山ならぬ”都市森林”から切り出された木材をそのまま使用し、ギターに仕立てる。本来なら廃材として焼却処分されるのがオチでしかないような木材にあらたな使用価値、すなわち”一本の新しいギター”として新たな息吹を与え、蘇らせる。見ようによっては”フンコロガシ”がフンを探して地上を歩き回って見つけたフンを自らの糧として再活用するかのような景色を、そこに見てしまったような気もする。いずれにしてもただそれだけの、しかしそれほどのことを、日々淡々と行うギターショップのオーナーの日常を描き出した映画だった

何気なく登場してくるギタリストもそうそうたるメンバーである。まず最初にビル・フリーゼルが登場してきたところでいきなりたまげてしまった。そのほかにはチャーリー・セクストンなど、名うてのギタリストが登場してくる。そのあたりもこの映画の見どころになっているように思う

なんということもない。見終わってから何がしかの教訓めいたものが得られるような種類の映画でもない。だけれども、我々自身にとっても何にも代えることのできないかけがえのない日常生活の様子が、そこには描かれているような気がした