すでに県をまたいだ移動を自粛した在宅生活も4か月目に突入し、いい加減に飽きが生じてきた。そこへ”GoTo”キャンペーンなる個人旅行を促進する施策が国によってにわかに喧伝されている訳だが、なぜか東京だけが外されているらしい
約1億3千万人の日本の人口のうち約1割強の13百万人が東京に住んでいる。国土面積378千平方キロメートルのうち東京都の面積は約0.6%に相当する2千平方キロメートルに過ぎないので、人口密度という点で言えば確かに東京は密だ。ここの出入りを制御したいという気持ちも分からなくはない
自分の感染リスク(および自分が万が一感染していた場合の他人に感染させるリスク)は最小限に抑えなければならない。それは他人との比較でより感染リスクの低い生活を送るべきだということではない気がしている。例えば、感染リスクの高い”夜の街”には行かないが近所の居酒屋くらいは行く、とか、朝の満員電車には乗らないが昼の電車には乗る、というのではない。それがどこであれとにかく出歩かない、移動しない、というのが最善だと思っている
だがしかし
人間である以上、よその道府県に住んでいる人は移動してもいいし何ならそれにGoToという名目で補助金も出るらしい、ということをテレビなどで見てしまうと「なんでオレだけこんなハードで禁欲的な在宅生活を貫かねばならないのだ」という心情にもなってくる。他との比較がどうしても頭をもたげてくるわけだ。あまりよくない考えのような気もするのだけれど。いや、実際には全く出歩かないし移動もしないという生活を送っている訳ではないのだが
そんなわけで久しぶりに東京の外に出てみたいと思い、とりあえず近場の秩父・長瀞あたりに行ってみようかということになった
そこで問題になるのが移動手段だ。レンタカーを利用し県境をまたいだ移動をするとそのナンバープレートに書かれた地名が地名だけに訪問先の方々の気分を害する可能性がある。場合によっては無用なトラブルをまねく可能性もある。さすがにそれは避けたい
ということは残る手段は電車しかなくなる。確かに電車であれば我々がどこからかやってきたか分かるはずもないだろう。東京から埼玉の県境のあたりだけ気を付ければ、都内を移動している間は都民のフリをし、埼玉に入ったところでは埼玉県民のフリをしていれば同一県内(あるいは都内)を県民(あるいは都民)がただ移動しているだけの構図には見えるはずだ。仮に乗っている電車が西武線「特急ラビュー」で行き先が「西武秩父」であったとしても、だ(ちょっと無理があるだろうか)
ということで、我々は業者(西武鉄道)から埼玉に入る逆通行手形(切符)を入手し、埼玉県民の都内の巣窟(池袋)から乗車客が極めて少なくしかもかなり快適な電車(特急ラビュー)に乗って抜け道(高麗川や横瀬川沿いの谷筋)を抜け、静かに”GoTo”翔んで埼玉よろしく約1時間20分で無事に秩父に到着することができた
秩父についたらそのまま秩父鉄道に乗り換え、長瀞に向かった。「ながとろ満喫きっぷ」という往復割引がついた、しかも指定乗車区間では何度でも乗り降り自由なフリーきっぷが便利。しかも2日間有効
長瀞では定番のお楽しみ、川下りを堪能。ドイツのライン川やバッハウ渓谷(オーストリア)のドナウ川など、規模の大きな川をフェリーのような大型船で移動したのが最近の経験だが、日本のような急流を下るような川下りの記憶は、思い返すと大学の時に京都で保津川下りをしたり、あるいは中学の修学旅行で愛知県の長良川下りをしたくらいしか思い出せない
長瀞といえば”千枚畳”が有名で、ずいぶん前にTVで歌手のサラ・ブライトマンがライトアップされたこの岩の上で歌っていた映像を見た記憶がある。ほかにはブラタモリでも取り上げられていたはずだ。地学としても大変にユニークな土地のようだ
実際の川下りといえば、意外と急流でもなくまったりと楽しめた川下りだったと思う。人気のアトラクションのため炎天下で30分ほど待つことになったが、なかなか気分はよかった。水量によっても変わってくるそうだがこの日は約20分間の川下りとなった
川下りを終えたあと、再び秩父鉄道で秩父に戻ってきた
昼ご飯を食べ損ねていたので、秩父駅前から歩いて地元で人気のわらじカツ丼のお店に行ってみたところ上の写真のように大行列だった。しばらく待ってみたのだが、まったく列が動く気配がなければ中のお客さんも全然出てこない。在宅生活により夏の暑さにまだ体が慣れていないせいだろうか、急に心臓がバクバクと脈打ち始めたりと身の危険を感じすかさず水を飲んで落ち着きを取り戻す。しかし相変わらず行列は微動だにしない。前後に並んでいたお客さんもあきらめたのかチラホラと列を外れていく
そして我々もあきらめることにした
秩父駅の中はフードコートやお土産物屋さん、あるいは酒屋さんなどがある。さらには豊島園(20年8月31日に閉園)の横にある「庭の湯」と同じ系列と思われる「祭の湯」という温泉施設まである。駅にいるだけでも結構楽しめてしまうという、大変に便利な駅だ
暑い日に汗かいた後のビールは最高だ。上の写真はアサヒの熟撰。先の酒屋さんで購入。たいへんにおいしいビールだった。フードコートでもビールは販売しているが、おそらく酒屋さんで購入した方がグラスであることや注ぎ方であったりとか、ベターな気がする
つまみにコロッケを食べて、これでお昼ご飯は終了。量的にも内容的にも昼ご飯としてはちょっと酷かったかも知れないが
秩父にやってきてその歴史ある街並みに驚かされたのが街を南北に走る番場通り。写真の4つ角は歴史を感じさせる建物が建っていてとても風情がある
精肉店の安田屋では味噌漬けの豚肉を2枚購入し家に持ち帰り焼いて食べてみたが、大変に美味だった。箱入りだけでなくバラ売りもしてくれて、1枚220円。もっと買ってもよかった
この建物には洋食屋さんが入っているようだが、この店構えに見覚えがあった。テレビ東京のドラマ25「絶メシロード」で登場したのを見たことがある。「絶メシロード」は低予算ながら爆発的ヒットを記録した映画「カメラを止めるな」で主演の濱津隆之さんが主演のドラマで、主人公のサラリーマンが週末ごとに一人で車に乗って車中泊をしながら様々な理由によりもうすぐ閉店し食べられなくなってしまうかも知れない店を訪問してはグルメを楽しむ、というもの
「絶メシロード」は「孤独のグルメ」に似たような演出だったと思うが、僕はこのドラマが好きでよく見ていたからしっかり覚えていた
酒蔵の名前の由来にもなっている武甲山は、秩父にいるあいだずっとその存在を感じることができるほど身近に感じられる。山肌が削られているように見えたのだが、あれは秩父セメントと何か関係があるのだろうか。見栄えという点ではよろしくない気がするが、土地によって様々な事情はあるものだと思う
昼にビールとコロッケしか食べておらずさすがにお腹も減ってきたので、これも地元の名物というホルモン焼きを食べてみることにした。コロナのせいか(旅行者から見れば)営業が不規則になっているためお目当てのお店に電話したらこの日は休業だった
別の店を探していたら秩父駅のすぐ近くにもホルモン焼き屋があり、訪問した時は満席だったので席が空いたら電話してもらうことにして、いったん秩父駅ナカのフードコートで休憩がてら時間を潰すことにしまた後ほどあらためて訪問することにした