アルさんのつまみ食い4

旅と食とワインと・・・ずっと続けます

Marlena Shaw "Who is this bitch, anyway?"


ギターの先生が「Feel Like Makin' Love」のコード進行を教えてくれた。最初に教わったものはロバータ・フラックによるもので、実はもう一つ、キー違いだが定番として頻繁に演奏されるものにマリーナ・ショウのものがあるという

はて、マリーナ・ショウって誰だっけ?


いつものように図書館でCDを借りてきて、聴いてみて、そして一度でドハマりしてしまったのがこのアルバム。この完成度の高さは一体何なんだ・・




Feel like~はもちろん秀逸な曲で、ヘッドフォンの左から聞こえてくるのはDavid T. Walker(デビッド・T・ウォーカー)、そして右から聞こえてくるのはLarry Carlton(ラリー・カールトン)でいずれのギターも素晴らしい。音数多くなく、かつ切れよく「ピッ、ピッ」と入ってくるデビTのオブリフレーズはセンス良すぎカッコ良すぎで、右から聞こえるラリー・カールトンも流れるようなギターで着実に演奏を支えている

単品でつまみ聴きしてももちろん良い曲ばかりなのだが、このアルバムの優れているところはそのトータル性にあるんじゃないだろうか。デビット・ボウイの「ジギー・スターダスト」やクイーンの「クイーンⅡ」のようなコンセプトアルバムに近い造りになっていると言えるかも知れないが、イントロはバーでの男女の会話に始まり2曲目では「Street Walking Woman」というタイトル通りに女の方がバーから通りへ出ていくシーンに繋がっているというように、全体で一つの作品になっているようなストーリー性が感じられるアルバムになっている。そのため、多くの名アルバムには駄作(と言ったら失礼だが)のような曲も中には混ざっているものだが、そのような作品さえもアルバムのトータル性を構築するために逆に必須のパーツになっているというケースはあるはずで、実際このアルバムの中には短いインタールードのような位置づけの曲もちらほら見受けられる


Feel like~以外にも秀逸な曲がいくつかあって、例えば3曲目の「You Taught Me How To Speak In Love」はサザンオールスターズの”いとしのエリー”の元になった曲だという記事を散見するにつけ僕も「間違いなくそうだろうなあ」と思ったのは、何も初めてこの曲をカブちゃんに聴かせた時に「あれ、この曲”いとしのエリー”じゃない?」と言ったからばかりではないと思うが、始まって40秒ほどですぐにサビに至るこの曲の演奏もデビTとラリー・カールトンによるとてもメロウな演奏がたまらない。何度もサビがやってきて盛り上がる

8曲目「You」などは聴き始めて1週間くらいした頃に急に好きになった曲。スローなブルースでギタリストはDennis Budimir(デニス・バドミアとかデニス・バディマーと訳されているものもあるがここではそのスペルから敢えてデニス・バディミールとしてみたい)。他の有名曲を弾いているデビT+ラリー・カールトン知名度に押されてこのアルバムの中ではやや目立たない存在になってしまっているデニス・バディミールだが、この曲における2分30秒から3分10秒あたりまでの演奏はそのタイム感とサウンドがぴたりとボーカルに寄り添う名演奏になっていると思う


名アルバムはジャケットもよい、ということは確かにあって、このアルバムもとても印象的じゃないだろうか。じっとこちらを見据えるマリーナ・ショウの視線。そしてこの写真は色が淡くてそうは見えないかも知れないが、中には黒いアフロヘアがアゴのあたりで繋がっているように見えて、まるでライオンの”たてがみ”のように見える写真もある。さらにデコルテを飾る首飾りはまるでクレオパトラのよう。エキゾチックで一度見たら忘れられないようなインパクトがある


ここにはその場の空気感のようなものも確かに感じ取れるような気がする。たんに腕利きのミュージシャンたちが集まって「せーの!」で作っただけでは出てこない、あるいはいくら機材が良いからといってよい音が録音できる訳ではないそれ以上の存在、言い換えればそれを”マジック”と呼んでも良いと思うが、確かにそのようなマジックがあるように思えるのは数ある名アルバムにも共通する特徴のように思う。そのような空気感もトータル性の一つの構成要素であるといってもいい


リリースは1975年だからちょうど僕が生まれたのと同じ年ということになるが、これまでの40数年のあいだ全く知らずに過ごしてきてしまったのが残念なアルバム

まだまだ聴いたことはない良い音楽というものがこの世にあるんだということに敬意を表しながら、これからも様々な音楽に触れていきたいとあらためて思った次第



Marlena Shaw "Who is this bitch, anyway?"
1. You, Me & Ethel - Dialogue
2. Street Walking Woman
3. YouTaught Me How To Speak In Love
4. Davy
5. Feel Like Makin' Love
6. The Lord Giveth And The Lord Taketh Away
7. You Been Away Too Long
8. You
9. Loving You Was Like A Party
10. A Prelude For Rose Marie
11. Rose Marie (Mon Cherie)