アルさんのつまみ食い4

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富士千歳 純米にごり酒 <京都>




とろりとした柔らかな質感、鼻に抜ける香りは甘酒のよう。”にごり酒”だけあってにごり成分が舌の上で軽くザラついた感触をもたらすものの、印象はあくまでも優しいもの。アルコールはそれなりに高いのだけれども、飲み口がよいのでつい杯を重ねてしまうのが危険だ




松井酒造は左京区の鴨川沿いに位置する蔵元で、目の前の通りから東の方向を眺めると五山の送り火で有名な大文字が見える。近隣の相国寺銀閣寺や金閣寺といった名だたる名刹にも酒を供している力のある酒蔵だ

酒質としては特段の個性が際立つわけでもないのだが、しかし万人受けする飲みやすい酒造りを行っているという印象がある。古刹に納める必要性を考慮するとあまり冒険はできないのかも知れないし、その方がよい気もする

今回取り上げた純米にごり酒は、蔵元近くにあり「節分」発祥とされる吉田神社で行われる節分祭のお神酒だそうだ。洋の東西を問わず、宗教は違えど酒が神事と深く関わりを持っているという点は共通らしい


ところで、製造年月の印字が「3.02+K」となっていた。3は令和3年、02は2月をそれぞれ意味するとして、+Kとはいったい何か?気になって仕方がなかったので松井酒造のHPから問い合わせを入れてみたところ、すぐに返事が返ってきた

その説明によれば、「+K」とは瓶詰め場所を示す記号であるらしい。基本は自社瓶詰めだが、上槽や瓶詰めのタイミング、本数によっては瓶詰め作業をよそへ依頼することがあるそうだ。万が一キャップの締めが十分ではなかったり、異物の混入があった場合に瓶詰めの後でもその経路を突き止めるための記号として「+K」という印字をしている、とのことだった

なるほど、品質管理は製造業の良心でありキモでもある。こうした工夫をしていることを知り松井酒造にはとても好感を持った

迅速なQ&A対応をしてくれたことには、いつも忙しそうにしているスタフの姿を見ているだけにありがたくも申し訳なかった気もする。反面、そういう記載の仕方もあるのだということを知り、飲み手としては勉強になった点はあらためて感謝したい

忙しい蔵にお手間をかけてしまった事については、好印象や感謝を感じた飲み手がここに一人いた、ということを持ってご海容頂きたいと思っている



富士千歳 純米にごり酒
蔵元:松井酒造株式会社
原料米:五百万石
精米歩合:70%
酵母:オリジナル
アルコール:14.0度
製造年月:R3年(2021年)2月
購入先:カブちゃんのお父さんからの頂き物